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[コメント] 友だちのうちはどこ?(1987/イラン)

志賀直哉の短編の最高傑作のようなこの呼吸。善人だった子供の頃を思い出させられる。黒牛がぬっと出てくるイランの村をほっつき歩く愉しさは何ものにも替えがたい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







根底に子供の無理解への批評があるのだが、この子はその違和感を言葉に纏めて表出できないでいるのだ。この状態を映画はフィルムへの永久保存しようとする。

煙草持っているのに孫に取りに行かせて、お爺さんは云う。「子供の頃は一日一回は殴られた。何も悪いことしていなくても、理屈をつけて一回は殴られた。おかげで礼儀正しくなった」「小遣い貰ったことは忘れても、拳骨を貰ったことは忘れんものさ」これらは、息子の母親への必至の説得と対照されている。

学校の先生もこういうロクデナシではなかろうかとヒヤヒヤしていると、ラストは反転して宿題は受領される。ここにはルールを守るものは批難されないという『千と千尋』的な世界観があるだろう。お爺さんの花が挟まれた、旅してボロボロになったノート。友達の宿題も彼がしていたのだろう。これをワンカットでさらっと提示できるのが映画の優れた処。ストンと落ちるラストが、名人の随筆を想起さる。

本作をベタ褒めしたクロサワは、冒頭の教室の扉を延々写すショットを『まあだだよ』引用までしている。再見。

(評価:★5)

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