コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] キャタピラー(2010/日)

銃後版『赤い天使』として観た。大西信満の手足は芦田伸介の軍医の、例の傘立てみたいなバケツに突っ込まれたのだろう。寺島しのぶのリアリズムは若尾文子の観念的な造形を丁寧に補足している。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「神は倫理に耐えられない」という命題が浮かび上がり、とても興味深かった。大西信満の造形は、中世ヨーロッパの古城に幽閉された動物神を想像させるものがある。神などというものは権謀術数でのし上がり、無茶苦茶をしてきており、更に無茶苦茶をしている者に利用されているのであり、反省だの告白だのを始めたら身を亡ぼす。だから口もきけない。時代の変遷で妻が発狂(篠原勝之とともに狂ったと解するべき)しても冷静で、冷静に自殺などするのであるが、それは倫理から逃げるために他ならない。入水自殺せんと池へ向かう彼の姿は、神の小狡さを象徴しており、印象に残る。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。