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[コメント] キャッチ22(1971/米)

「それでこそアメリカ人だ。ユーモアを忘れちゃいけない」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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「私にとってジョークとは、真実を語ることだ」とバーナード・ショーが云っている。「それは世界で最も面白いジョークなのだ」。そんな具合に語れるのは才能なのだろうが、この切り口で見事に成功している本作の勝因は、まさに「キャッチ=22」という秀逸な仕掛けよるものだ。このラッセルのパラドックスに似たジレンマは、ただ軍則のギャグというだけでなく、脱出不可能性という形で作品全体を覆っており、独特のリフレインで強調され、収束のゴムボートが海岸から全然離れていかないというギャグでダメを押される。これは思えば軍法会議並の困難なしに何事からも脱出ができない私たちの似姿でもある。

このブラック・ユーモア映画に莫大な投資(建造物は全部セットだとか)をするアメリカ人のスタンスが素晴らしい。本邦ではこんな喜劇は考えられない。いやもう、笑いを愉しむリベラルという存在自体が羨ましい。何かというと目くじらたてて些末な論難を始め、集会ではいまだにショボいフォークなど歌い出す堅物だらけの日本の革新系に、爪の垢でも煎じて飲ませたいものだ、マジで。もっとも、本作ではコメントのようにこれも強迫観念の一部なのだが。

ギャグは飛行機爆破を無視する件はじめパイソン系が多いがパイソンのどの映画よりも面白い。洗濯担当兵が大将にさせられる件とか、オーソン・ウェルズの将軍と娘婿とか、水中への爆撃とか、病兵の代役とか、いいギャグが数珠つなぎで途絶えることなく、MM興業の件でギャグがどんどん悪夢めいて行くのが上手い。飛行機内の撮影がどれも見事。裏版『ジョニーは戦場へ行った』(何と同年の作品)でもあるだろう。

(評価:★5)

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