[コメント] ナポレオン(1927/仏)
映像は最先端、思想は最末端。よくあることだが。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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三脚から自由になったキャメラがローアングルから仰角を構える。冒頭の雪合戦では曇天が、「犠牲者の舞踏会」では天井が捉えられ、映画が世界をこのように記録すのは初めてであろうという感動がある。トリプティックは世界初のシネラマでもあり、力強さはすでに完成品だ。また、羽毛の飛び交う寝室の乱闘は『操行ゼロ』を予告している(スローモーションではないが)。一方、細かなカット割りはプドフキン『母』の後塵を拝しており、何度も連発するのはやり過ぎの感がある。
思想的には植民地主義を堂々謳いあげる愚劣なもので、撮られたのは18世紀ではない、すでに昭和なのだ、時代の制約で仕方がないといったものではない。孤独で依怙地な少年ナポレオンが成長して、舞踏会ではしゃぐ面々を「お前らがフランスを駄目にする」と罵倒する件は、さもありなんという心理描写で優れているが、その後続くロマンスも、何度も出てくるカリスマの証明も、史実だから仕方ないという以外に我々を納得させるものはなにもない(ただしフィルムの脱落の可能性がある。コッポラ版の感想)。
さらに、ナポレオンがダントン他から「世界共和国」の委任状を取り付けるとは驚嘆の展開。イタリア遠征でただひとりのイタリア人も登場させない黙殺法は露骨である。嫁さんの顔が悪魔憑きにみえる。戦後の続編が顧みられず、本作が「呪われた映画」であるのは、思想上当然のことであった。
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