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[コメント] レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989/フィンランド=スウェーデン)

ユルい歌謡喜劇でネタは途切れずダラダラ観る分には愉快でいいが、ときどき挿入される記号は受け取り方に戸惑うものがある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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(移民国家)アメリカでアメリカ人だけしか歌えない、という前提はいったい何なのだろう。まるでトランプ政権を予言しているかのようだ。フィンランドはソ連とアメリカに挟まれて苦労した国だから、89年にレニングラードのカウボーイたちに馬鹿やらせて遊びたい祝祭気分はよく判るようには思う。しかし、焚火囲んでコサックダンスするシーンぐらいは笑っていられるが、「カントリーを演れ」と云われてソ連の国旗あしらったステージ衣装でソ連の農家を唄う件は何なのだろう。横暴なマネージャーのマッティ・ペロンパーが「革命」で拉致されたあと復帰して(共産主義ではなく)「民主主義の復活」というのも複雑だ。

滑稽のなかに何か含みがありそうで、笑っていたらこちらが斬られそうな気がする。カウリスマキの立ち位置は(ジャームッシュ同様)ハリウッドにはアンビバレントだろう、アメリカではなかなか受け入れられなかったバンドがメキシコでウケる、という収束にこの視点が見える。89年はすでにワールドミュージック全盛でロックンロールなど古臭い音楽だったのであり、本作はこれがパクス・アメリカーナな価値で抑圧される物語、ロックンロールが格好いいという感想は外していると思われる。

全体に無口なバンドマンは『ブルース・ブラザーズ』を想起させる。演奏では「テキーラ」が白眉。「日本車はやめとけ、アメ車にしろ」とジャームッシュが云うのが時代。

(評価:★3)

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