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[コメント] 秘密(1999/日)

山谷初男橘雪子の子供の話なのだから、確かにこれはポルノ映画に違いない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「お前の人生を生きろ」と云われて、一晩泣いただろう翌朝の広末涼子は、すでに小林薫の妻でも娘でもない。彼女はふたりだけの「秘密」ではなく、ひとりだけの「秘密」を抱える存在(すなわち普通の人)に成長している。観客をすっかり騙してしまうラストは辛辣なものであり、さらに云うなら盗聴に騙された夫への復讐でもある。気持ちの悪いほど仲の良い家族の感動作として観ていた観客は、この密かに進行していた独立劇に足元を掬われる。メジャーの「感動作」をこのようにドライに仕上げる滝田の姿勢は素晴らしいと思う。

件の一晩の成長は劇的な山場であり、何か演出したくなるところだろうにこの監督、何にもしない。ただミディアムのカット繋ぎで進めてゆく。ここがよかった。平凡な話法だからこそ伝わるものがあった。

原作は知らない。特に前半、死んだ娘の魂への想いがほとんど描かれなかったことは、コミカルな奇譚を成立させるには仕方なかったのだろうが、決定的な瑕疵には違いない。しかし、贔屓の引き倒しめくが、肉体を持って生きている奴が偉いのだ、とは、ポルノ映画の思想であり、本作はこれに殉じた、と曲解できないものだろうか。

(評価:★4)

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