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[コメント] エリン・ブロコビッチ(2000/米)

結末が判っている実録ものなのにここまで面白くできるのはすごいことだ、確かに。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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役人の頃、公害担当をしたことがあったので、訴訟の成り行きは興味深かった。六価クロムは日本では現在も化学工場などで使われており、浄化装置で規制値以下にして放流することが法律で義務付けられている。映画では(携帯電話が出回っている時代に)規制値を大学で調べてもらって初めて判るという件があったが、日本では水質汚濁防止法の施行規則に書いてあり、図書館やネットで誰でも見られる。本邦では1970年のいわゆる公害国会でこれらの法は整備された(それまでは無茶苦茶だった)。アメリカは州ごとに違うのだろうが、規制は日本より遅れていた訳で、巨大企業の国だなあと思う。

もちろん、企業起因の公害が次々と問題を引き起こしたのは日米共通。どれも恐ろしい事件であるが本作も恐ろしい。映画はPG&Eを実名で登場させる骨太さが素晴らしい。訴訟に係る横暴は変な弁護団と恐喝電話だけで、別にドンパチが始まる訳でなかったのは実録らしい処。弁護団に工場から採取した水をグラスに入れて勧める件が痛快。なお、同社は本作が制作された2000年に、それが運命のようにカリフォルニア電力危機を起こして経営破綻した由。

ジュリア・ロバーツのシングルマザーの奮闘は頭が下がる。出張を聞き流すアルバート・フィニーとか、主夫業を買って出るアーロン・エッカートの登場とか、密告者とか、幾つかの偶然が彼女を成功に導いているが、これらがなければ彼女は貧困のままだったのであり、そのような人が大多数だという含みを見逃してはならないと思う。

主夫のエッカートもいい。彼は男性らしく、ロバーツを独占したかったのだろう。「やっと私の話を聞いてくれる人ができたのよ」と意気込むロバーツを見てエッカートは身を引く。女性の社会参加にはエッカートのような古いタイプの男性は不要なのだ。今の時代の一面をよく表している。本作はここだけ辛口だった。

ロバーツが障碍を抱えた少女に美人になるよと云う件、エッカートから赤ん坊がはじめて言葉を話したと(アルバート・フィニーから脅し取るようにゲットした携帯電話で)聞いて涙ぐむ件、和解で妥協する件、バーの奇妙な南部男に情報提供と云われて突撃する件、600余人にフェラしたと毒づく件、どれも素晴らしく心に残る。編集は観客の物語の理解度を信頼した大胆なもので好ましく、時にジャジーで静かな音楽は羽目を外したロバーツの喜劇的な造形を絶妙に補完している。

ただ、法外な報酬を受けてヤッターのラストは、アメリカだなあと呆れてしまった。彼女は前半、まともな保育施設にも恵まれず、保険にも入れていなかった。課題の克服は個人でなすものなのだ。原告団に対しても、金額だけ示してあとは自分たちでやりなさいと云うことなのだろう。アメリカの社会の成り立ちは、日本ともヨーロッパとも違う、控え目に云って独特なものだと思わずにいられなかった。

(評価:★4)

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