コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] チャンプ(1931/米)

ディケンズ調の貧乏と金持ちの往還話でチャップリンの影響も色濃く、快活な序中盤はとても愉しい。映画の作りはまだ31年なのにハイレベル。子役のジャッキー・クーパーはとても上手く、上手すぎるような気がしてくるほど。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







白眉は母親のホテル訪問の件で、階段の踊り場でのタバコ盗難、屋根の上から父に手を振り、戻って妹が読む眠り姫の物語を批評する。ホテルの室内ではない中間地帯での振舞いという処に、場所の磁力を感じさせる演出だ。これは母親に連れて帰られる列車の車内の不安定さにも感じさせてくれる。私的ベストショットはホテルから少年が車運転して帰る件で、ぬけぬけとしていて面白い。スクリーンプロセスでないのが効いている。

親父のウォーレス・ビアリーも好演。留置場で子供と別れようと「お前が嫌いになった」と云う件が泣かせる。作劇としては、ボクシング復帰試合の終盤は勝利してしまうのが面白い。山のような類作の先駆として基本を示しているかのようだ。

しかし、お涙頂戴に収まるのは不満。唐突な医者も前振りどおりに試合後に死んじゃうのは不出来なメロドラマだろう。この子が金持ちの母親の庇護に入れることがあらかじめ決まっているのも温い。いったん母親から逃げているのに、何のわだかまりもなく和解のラストを迎えるのもご都合主義だろう。

撮影はとてもいい映画なのだが、ボクシングの試合を早回しで見せる処だけは時代を感じる。唾の効用が語られるのは『シェーン』の先駆だろう。黒人少年を友達として配しているのは、さすが『ハレルヤ』の監督と思わされる。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。