観ているうちに「これは，まさに『ドラえもん』と同じではないか？」と思ってしまった（笑）。上映後，隣で観ていた妻も同じことを言っていたから，こう感じた人は結構多いのではないだろうか？

『ドラえもん』のストーリーにはいくつかのパターンがあるが，わりと多いのが「ドラえもんの道具を借りたのび太が調子に乗って悪用し，みんなの顰蹙を買ったあげく，最後にその報いを受けて失敗する」というもの。この作品のブルースがまさにのび太そのものだ！

それにしても，神の力を授かったことを試そうとするブルースが，『十戒』さながらに皿の中のスープを左右真っ二つに分けてしまったり，冒頭『炎のランナー』のテーマ曲に乗ってミルクを注いだり…というパロディ・シーンは，本当に笑えた。ただ，肝心のギャグが単発になってしまっていて，ストーリーそのものと噛み合っていないような気がした。

正直なところ，あまりに自己中心的なブルースのキャラクターはお世辞にも共感できないし，ラストで彼が自分の身勝手さに気づくところも，心境の変化があまりうまく描かれていたとは思えない。もちろん，この手の映画に「すべての人の祈りにどう答えるか？」という重いテーマを真正面から描くことを期待してはいないが，もう少し，このテーマと笑いをうまくミックスさせる描き方もあるのではないかという気がした。あれほど人々の祈りが云々…と言っていた神が，ラストではブルースに愛する人のことを思えと示唆するところも，ちょっと拍子抜けしてしまった。

この作品，ジム・キャリーファンにとっては彼の持ち味が存分に出ている「心温まるコメディ」なのかもしれないが，特に彼のファンでもない私からみると，単発なギャグはおもしろいものの，やや中途半端なコメディと感じられた。