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[コメント] イースト/ウエスト 遙かなる祖国(1999/ブルガリア=仏=露=スペイン=ウクライナ)

自分の将来に「可能性」すら見いだせないような閉塞感。それが映画全体の重苦しさを支え、アレクセイの忍耐を際立たせる。
Walden

映画の筋とは直接的には関係ないところでいろいろ考えさせられた。

自分の実直な努力によって自分の生活を向上させることに希望をもてない時代・状況というのは、どんなもんなんだろうと考えさせられた。

そして、そういう時代・状況が、人々の心に与える影響とはどんなんだろうとも考えさせられた。主人公たちの同居人だった飲んだくれどもは、違う時代、違う状況であれば、良き隣人になれたであろうか。

お互いにお互いを監視させる管理社会は、人々の間に猜疑心を生むんだろう。それはまたそれで、人々の間に不必要な壁を作る。

なぜ、そのような人々が将来に希望をもてないような社会が、まがりなりも戦後の大国として、40年以上も君臨し続けることができたのだろうか。まあ、この映画の内容がそのまま当時のソ連を普遍的に示しているとは言えないのだろうけど。

戦後の日本が経済的に成功したことの要因の1つに、たとえ身分なり現在の社会的地位がどうであろうとも、勉強をして、良き大学に受かれば、出世することができるという「神話」が成立し、人々に希望を与えたことがあるという人がいる。

そこでも鍵となっているのは、人々が、たとえ今はどうであろうとも、将来に希望をもてるかどうか、ということだろう。

人々の自由を奪い、将来の可能性を閉じる社会体制への小さな・個人における抵抗。それがこの映画の描いているものかもしれない。

(評価:★4)

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