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[コメント] ハリー・ポッターと賢者の石(2001/英=米)

「実は僕には特別な力があって、あの壁の向こうには不思議な冒険の世界が待っているんだ」ってな夢を見たことがあることを思い出した(過去形)。
Walden

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 意外とここの批評空間での評価が辛口なのにびっくりした。

 僕は原作を読んでから見たので、「原作なしのイメージ」というのはちょっと想像しがたく、あくまで「原作を映像化したものを見たい」という期待で見たので、この映画には充分満足した。

 何より、冒頭のシーンが、原作を読んで自分でイメージしたものそのものが出てきたのでそこからすぐに引き込まれた。ハリー役の男の子も、一度ああやって演じられてしまうと彼以外には考えられないくらいイメージぴったりで、よく見つけてきたもんだと感心した。

 しかし、時間の制約上仕方ないこととはいえ、ストーリーがややかけ足だったような感がすることと、クウィディッチのシーンがいまいち迫力なかったのが残念だった。「ほうきに乗って空を飛ぶ」というのは、「魔法使い」というもののイメージ上大変重要なものだと思うので、マトリックスばりに力を入れて描いてもよかったと思う。全体的に言って、魔法の世界の雰囲気作りは満点に近いが、個々の魔法そのもの(ほうきやら何やら)に関してはやや何がのこる。

 ただ、このお話(原作も映画も含めて)の最大の魅力はやはり「魔法の世界の子供の世界」の描き方にあるんだろう。

 まずハリーという少年の設定だが、彼は、10年間、魔法なんて大嫌いな養父母&クソガキにしいたげられてきたが、「実は」魔法の世界の伝説的な存在で、不思議な力が宿っている。

 多くのコメンテーターの方が批評するように、これは「持って生まれた血筋」で成功が確約されているエリートのお話ともとれる。

 だが、原作を最初に読んだときに僕が感じ、そして映画を見てまた思ったのは、これは「普段は苛められているけど、「実は」僕には不思議な力があって、あの壁の向こうには不思議な冒険の世界が待っているんだ」という少年・少女の夢を具現化した物語なんだということだ。

 子供の頃、「きっと自分には特別な何かがあるはずだ」と夢見たことがある身としては、そういう発想自体は憎めない。「僕にもきっと特別な何かがあるんだ」・・・それは、決して現実ではありえず、あくまで「夢」の中での物語でしかない。それを具現化しているのがこの物語なんだと思う。だから面白い。

 そして、「9 3/4」プラットフォームという発想に端的に現れているように、「自分が普段何気なく生活しているあの場所が、実は不思議の世界への入り口かもしれない」という、なんとなく日本の昔話にも通じる(「あの裏山には実は伝説があってね・・・」みたいな)ワクワク感がほほ笑ましい。

 「チョコレート」のような小道具の使い方もニクい。お菓子におまけがついていて、それを集めるといういかにも子供の世界らしい設定は、魔法の世界への親近感を高めてくれる。

 また、ハリーのお友達をはじめ、登場する子供たちの性格の設定も、「あー、学年に1人はこういう子いるよね」という感じの設定だ。はっきりした個性があるから、見る人によってそれぞれ自分のお気に入りが出てくるだろう。

 「魔法の世界」を、ただ単に「現実離れしたおかしな世界」として描くのではなく、こういう小道具や設定を通じて子供にとって親近感あふれるものに仕立て上げたうえで、アイディア&伏線一杯の冒険活劇にしたのが、この物語の素晴らしさの要因だと思う。

 全般的に、まだまだ不満はあるけれど、個人的にこういうファンタジー系のお話が大好きなのと、今後に期待する意味で5点。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)peacefullife[*] づん[*] ルッコラ

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