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[コメント] ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序(2007/日)

何の為?

それなりに面白くはある。劇場で観た際には大画面の迫力も相俟って、戦闘シーン等には震えた。

だがそういったこととはべつに、根本的な疑問はある。それは、大体何故今シリーズを制作するのかということ。勿論商業的理由はあるのだろうが、それだけでもあるまい。あるいは通常の物語としては破綻して終焉することになった旧作をやり直すという意図でもあるのだろうか。「アニメーションの映画学」という本の中では、『エヴァ』にも触れられており、『エヴァ』は複数のジャンル的想像力のより合わさった作品で(戦争物、スパイ物、学園物などetc)、その中で旧作の劇場版は、シンジ少年の自我の物語を最終的な審級として採用して、作品全体に決着をつけたと論じられていたが、あるいは今度は、錯綜したジャンル的想像力(旧作で廃棄された物語の可能性)にケリをつけることを目論んででもいるのだろうか。

いずれにせよ、それは何の為なのだろう。個人的に旧作のケリのつけ方を作家の逃避ではなく必然だったと感じている自分としては、今シリーズは何の為に制作されるのかということが気になる。いずれにせよ、もしシンジ少年の自我の物語の決着が、作家の逃避ではなく必然だったとするならば、今シリーズでもやはりシンジ少年の自我の物語は避けて通れないものとなるだろうことは間違いない。あるいはそうでなくてはならないと思う。庵野秀明を一アニメ演出家から一躍作家へと押しあげたのは、何はともあれ、その物語であったのだから。そしてそれは取りも直さずに、作家自身の物語であるはずで、そのように見られることを作家自身もまた引き受けているはずだと思う。

ちなみに、個人的に、物語内の謎解き要素などは、どうでもいい問題としか思えない。それらはどういう決着がつけられても、結局は物語の枠組みそのものを超えることは出来ないのだから。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)DSCH[*] おーい粗茶[*]

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