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[コメント] 出張(1989/日)

出張先へと急ぐ中年男、ゲリラ(国内)に誘拐さる。勤め人の悲哀が滲むブラック・コメディの小品。

山形へ出張する途中の中年男が、山中で偶然ゲリラに遭遇して誘拐されてしまう。ゲリラは男の家族と会社に身代金を要求するが…といった荒唐無稽なおはなし。山形の山中にゲリラが潜伏しているという発想からして変だが、映画の描写もどっか間が抜けていて可笑しい。ゲリラは現実的存在ではなく、家族や会社に縛られる中年男の解放願望の象徴なのだろうと思われる。つまり寓話。バブル全盛時の映画だが、浮かれたように見えたあんな時代でも、ひとりの平凡な勤め人からすれば人生の渋味は大して違いはなかったのだ。そんなことを思わされる映画。聞けば沖島勲監督は「まんが日本昔ばなし」の文芸を手懸けている人だそうで、そう思えばこの映画の独特なセンスも納得がいく。

難点を言えば、ゲリラ連中とのからみに厚みがないように感じられること。現実から浮き立つ寓話的なセカイをもっと魅力的に丹念に描けていたら、より染み入る映画になったと思う。アイデアと役者の演技には引かれるだけに、勿体無く思えた。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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