[コメント] 大怪獣バラン(1958/日)
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何というか、アメリカのB級怪獣映画のようである。例えば自衛隊の攻撃シーン。かなりの場面でライブフィルムを多用しているところも何となくB級風味だ。合成シーンの少なさを、編集とかで補っているあたりもそれっぽい。特殊な火薬で倒したり、ナレーションをつけて終わらせるという展開もそうだ。
それもそのはず、この映画は当初海外と提携して、アメリカでのTVムービーとして製作されたもの。それが途中で海外側が手を引いてしまったため、結局純国産の怪獣映画となったのである。TV向けなのでスタンダードサイズで撮影されたため、フィルムの上下を切ってワイド画面風に仕立て「東宝パンスコープ」の名前で劇場公開されたのだった。
……にしても、本作は地味な印象が強い。主演の野村浩三は後に「ウルトラQ」の「変身」で巨人として登場したくらいの知名度だし、園田あゆみも他で名前を聞かない。怪獣バランも存在自体はかなり地味で、本作以降は『怪獣総進撃』にカメオ出演したくらいだ。まあ「空を飛ぶ」くらいの特技しかないのはキツイが、同じように特技の少ないマンダが東京を襲撃していたのと比べるとえらく待遇が違う。それだけ地味だということなのか。
とはいえバランはえらく土着的な雰囲気がある怪獣で、地味さゆえ逆に印象に残る怪獣でもある。かの金子修介監督もヤマト聖獣の三匹を、当初はバラン・バラゴン・アンギラスで考えていたということからしても、やはり土着的だという印象が強いせいだろう。
地味さに加えて、自衛隊の描写が多いのも本作の特徴。特別な兵器は登場せず、怪獣が陸にいたら戦車、海にいたら爆雷攻撃という感じで、至極現実的な戦闘が続く。しかし逆に先に上げた雰囲気の映画で「○○光線砲」とかいう兵器が出てきたらかえってシラけるだろうから、これはこれでいい。ライブフィルムを使ってたりするのは予算の問題かもしれないが、まあそれはしょうがない。それがダメだというなら相当数の映画が否定されてしまうだろう。
……しかしいくら土着的だからといって、1950年代に東北にあんな秘境があったんでしょうか?それを言ったらおしまいか。
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