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[コメント] ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣(1970/日)

ゴジラ以外の新怪獣路線を開拓しようとした東宝の、最後の花火。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 何というか、タイトルが悪い。怪獣名がこれだけ列挙されてれば「三つ巴の大格闘」をイメージしてしまう人の方が多いはずだ。だが実際に観てみると戦っていたのはガニメとカメーバだけで、ゲゾラは話の中盤で死んでそれっきりという点でも、本作はあまり良くないイメージを与えている。ずっと観ていて、たいして合成シーンが無いことに気が付いたが、要は予算が無いのだろう。

 それでも怪獣の造形は結構頑張っている。ゲゾラはともかく、人が入っているように思えないガニメと、甲羅のごつごつ感と首を伸ばすギミックが面白いカメーバの出来は立派。この辺は東宝特殊美術陣の意地を感じる。両者の戦いっぷりは怪獣プロレスとは言えないが、奴等は怪獣ではなく巨大生物だ。生物っぽい戦いを表現できれば成功……ではあるが、その分イメージは地味になってしまった感じがある。個人的には、カメーバは好きなんだけどね。

 まあ地味ではあるけれど、何か憎めない。セルジオ島の祈りの歌は『キングコング対ゴジラ』のファロ島のそれとそっくりだし(音楽は同じ人)、その島の人たちは旧日本軍がいた影響で日本語OKという設定なのだ。「コレ石油トガソリン!」「鉄砲!」「弾出ルヨ!」そんな風にしゃべる島の人たちの協力でゲゾラは倒せるし(20〜30メートルという、倒せるかもしれない微妙な大きさ)、最後は高橋厚子が宇宙人に乗っ取られた佐原健二に対し“人間愛”を訴えて説得してしまうという展開も凄い。

 東宝が放ったゴジラ以外の新怪獣路線の、最後の花火。これ以降東宝は、怪獣に関してはゴジラとその系統以外に手を出していない。別に大きくなくてもいいから、何か別の怪獣映画が観たいと思っているのだが、果たしてその日はいつになるだろうか……。

(評価:★3)

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