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[コメント] ミスター・ルーキー(2002/日)

「阪神タイガース」だからこそ成立する映画。これが他球団だったら、こうはならない。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ……他球団のファンの方には甚だ失礼で申し訳ないが、しかし「阪神が優勝すること」に何か凄まじいものを感じてならない。

 別段野球ファンでも無い人間がこんなことを書くのも変だが、例えばここ以外に、優勝することだけでも世間の話題をさらう球団があるだろか。確かにどこの球団でも優勝すればにわかファンが増えるし、マスコミがそのフィーバー振りを書き立てる。横浜ベイスターズ、そしてダイエーホークスの時もそうだったが、阪神となるとなぜこうなるのか。単なる判官びいきのようには見えないし、長年ダメ虎と言われ続けてきたその歴史、そしてそんな虎を支えてきた関西という場所等、などいろいろあるだろうが、それらの想いを総括して「阪神」という球団が永遠に支持されるのか、と考えてしまう不思議な魅力を持つ球団だ。

 そして主人公のライバルがおり、かつ本作のクライマックス=優勝戦の相手球団が「G」なのも、「阪神」を舞台にするならば当然の結末だといえる。虎もGも日本プロ野球創設時代から存在している球団だ。2リーグ制にする際、阪神は当初パ・リーグに行こうと当時の球団オーナーは考えていたが、それを「G」が引き止めた。「それでは伝統の一戦が出来なくなる」という理由からであるが、対決したいが為にそうまでさせたというのも凄い。東西の両雄が対決するという起源を探ればそれこそ関ヶ原の合戦にまで辿り着いてしまいそうだが、他球団にここまでのものがあるだろうか。いや、無い。そして「G」が優勝する映画を作っても当たり前すぎて面白くない。阪神が優勝するからこそ面白いのだろう。

 それだけ熱いものがあるのは十二分に分かるが、作品自体の雰囲気は映画というよりもTVドラマ、いやTVのそれに近く、海外の野球映画(例えば、インディアンズが優勝する『メジャー・リーグ』とか)にあるようなスピード感と盛り上がり方が少々足りない。確かに画面を見ていて、映画のために甲子園球場に詰め掛けた3万人の阪神ファンの“熱さ”は見て取れるが、いかんせん撮り方が下手。普通にTV中継しているのと大差無いアングルだったり、虎模様一色に染まるスタンドを広々と眺めすぎなのが残念なのだ。

 出来ることならもっと視点を下げ、優勝へ向け恐ろしいほどに盛り上がる熱狂的阪神ファンを、それこそ“舐めるようなアングル”で撮って欲しかった。話自体はストレートで構わないし、むしろこれくらい簡単な方が受けるはずだ。だが映画の演出としては、あまりにも個性が無さ過ぎる。もっと凝ってほしいのだ。ミスター・ルーキーの決め球のように、それくらいの面白いボールを投げてみろ! キャッチャーはそんなに野暮ではない。

(評価:★3)

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