[コメント] 12人の優しい日本人(1991/日)
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図らずも、世界で最も適正な事態収拾能力を発揮する日本人を描いてしまっているところが面白い。だってそうでしょう?結局二転三転しながら、おそらくは最も真実に近い結論にたどり着いてしまった。ひとつの信念や信教によらず、また、他人のそれを否定も肯定もしない。さまざまな価値観を持っている人たちが、「当たり障りない」という微妙な人間関係をコントロールし、他人と衝突せずに生きていく。
強靭な意志による力ではなく、万事を丸く収めるという力が、被告にも被害者にも作用することで事態を解決してしまうのだ。基本的には笑いをとることを最優先に考えているだろう三谷幸喜が、どこまで意識しているのかわからないが、そういう日本人的解決方法の優秀な側面を表現することで、実は本家『十二人の怒れる男』相手に、単にもじりというだけでなく、カウンターを食らわすという意味でのパロディになっているのだ。底辺にある意地の悪さこそ三谷幸喜の真骨頂であるならば、12人の怒れるアメリカ人にはこの事件を解決できないんじゃないか?くらいの当てこすりが多少はあるように私には感じる。
相島一之が最初は無罪を主張したものの、他の全員が無罪といったことで、自分の別居中の妻に対する感情と絡んで「(みなのいい加減さを、妻を、世の中を)俺が正してやらなければいけない」と思うに至った点、トヨエツが頑なな老男女に興味を覚え加勢する気になった点、この2点が結局のところこの物語の軸となるのだが、どちらもあまり上手く表現されていないと思う。そういうところの粗さが気になってくるのは、やはりこの映画のリズムが舞台のシットコムではなく、サスペンスドラマ風だからだろう。
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