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[コメント] 馬(1941/日)

四人の撮影者の分担が興味深いのだが、ルックの相違は余り感じられない。ただ、三村明の室内撮影だけは重い質感で違いが判る。全体に自然を美しく撮ろうという意志の殆どない演出なので、そうなると撮影の見せ場はどうしても雪を扱う冬のシーンに多くなる。あと、屋内シーンのマルチカメラ撮影は見当たらない。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 仔馬の出産シーンはおろおろする高峰秀子を中心に家族を映して直截的な出産場面は映さない。仔馬が立ち上がるのを皆で見守る部分は感動的だ。むしろの間から顔を出す子供ら。仔馬がなかなか立ち上がらなくて観客も焦らされる。このあたりはかなり計算された演出だ。

 演出の計算に関してもう一つ特筆すべきは、後半までアイドル・高峰秀子をわざと可愛く撮ろうとしていないことだ。笑顔のカットが殆どない。アップも全くない。紡績工場から帰って来て、放牧している馬の中から「小僧」を探すシーンあたりから演出の扱いが変化し、俄然可愛くなる。これも演出の計算だ。ラストの馬市のシーケンスで曳き馬をする高峰を延々とアップでとらえる。ラストカットも高峰のアップカット。全体に非常に統制の取れた演出で、思い通りのことがバッチリやれている映画に見える。黒澤明の貢献も大きいのだろう。

#備忘で配役について記す。

・馬市の競売を仕切る坂本さんは清川荘司。中盤でも登場し祈祷師を追払う。

・父親は藤原鶏太(釜足)、母親は竹久千恵子。二人とも好演。竹久千恵子の映画をもっと見たくなった。

・隣家の佐久間善蔵さんは小杉義男。学校の先生は丸山定夫

・母馬「花」はアングロノルマンの内国産。先生に聞かれて高峰が答える。

・藤原釜足に酒を飲ませる男で柳谷寛がワンシーン登場。

(評価:★4)

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