[コメント] 座頭市地獄旅(1965/日)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭、船への渡り板から足を踏み外す市。前作で道端の石をひょいっと飛び越えた市とは違う市が描かれていた。得意のイカサマ博打も失敗する。本作の市は失敗が多かった。
そして中盤、やくざ達に待ち伏せされ超人的な動きで斬り伏せる市、だが娘への大事な薬箱を失くしてしまう。修羅場と化した川原のどこかに落ちているだろう箱、地面を這いずり回わり手探りで箱を探す市。
殺気を出す刺客なら心眼で察することも出来ようが、ただの箱は探すことが出来ない。市の数センチ先にあるのにそれが見えないもどかしさ。市の心眼は人を傷つけ殺す為の眼。子供を助ける為の眼ではないのだ。
市は現代でいうヒューマニストだ。だが、それを示そうとあがいても毎日のように鮮血を浴びることになる。市は自らの限界を承知し、それに抗う為の反抗を繰り返している。現に本作で娘に傷を負わせた遠因は市自身にある事を自覚しており、さらにその娘の父親もかつて市が切り殺したその他大勢のチンピラの中にいた事を知る。
市は似非ヒューマニストとして存在し、自身はその泥沼のような悪夢から抜け出したいとあがいているのだろう。だから哀しい。市の存在は哀し過ぎるのだ。
PS,成田三樹夫との障子を挟んだ殺気のやり取りを両者のカットバックで見せる演出。殺陣のアクションシーンよりも格段の緊張感が画面を支配します。実に映画らしく、映画は楽しいと思わせてくれる良い演出でした。
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