[コメント] インファナル・アフェア(2002/香港)
映画を見終った人むけのレビューです。
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無間地獄とは連続的な時間と空間、業苦の歴史の中で語られるものである。諸行無常・盛者必滅の世界観は、「過去」の語り抜きには成立しないにも関わらず、時間と空間の概念が希薄である。
時間=過去=歴史の希薄。欠落の補充が、続編において単なる補充以上の威力で果たされてはいるものの、肝となる諸行無常感の前提となる人物の彫り込み量が、単体作品としての最低ラインを超えてない。一言で「七年」とか言われても・・・と困ってしまう。単純に、劇として死に重みが生じないため、演出者と観る者の間で大きな温度差が生じてしまう。
空間の希薄。「街」を切り取るシークエンスが致命的に少ない。真夜中のハイウェイや白昼の高層ビル街を映し出すのは結構だが、香港らしい高温多湿の暑さにうだった空気感、犯罪と血に沈む残忍な街の闇などの描写が決定的に足りない。
善のために悪を為す男と、悪のために善を為す男。対立する二人の境界線があいまいになるグレーな「正義観」は現代的で素晴らしい。ただ、双方とも倒錯や混乱をもっと映すべきであって、配置が巧妙でも、それぞれの「もがき」が足りない(前者に到ってはものの数カットのみ!)し、ままごとみたいな女との交歓がさらに水を差す。
演出は空前の格好良さと致命的なダサさのカオス。(それが香港とは言わせないよ。)何かと差し挟まれるモノクロのフラッシュバックとスローモーションが 唖然とするほど格好悪い。劇伴もセンスがなさ過ぎる。ウォン警視墜死(これははっきり言って素晴らしい)→フラッシュバック(最悪)で私のテンションも墜死した。
あたら良い題材を。惜しいとしか言いようがない。
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