ハリウッドは本作の果実でこの先九十年食い繋いだと云っても過言じゃないと思う。終盤への叩き込み方は素晴らしく、ジョージ・バンクロフトの気付きは美しい。コクのない三角関係において何が美しい訳ではないのだが、気付き自体が美しいと思わされる。

パーティ会場に散乱するテープ、イブレン・ブレントの瞳に当たるピンスポット、監獄でのチェッカーと通りで待つイブレンの焦らしまくるカットバック、取り出した拳銃を示す影、迷い込んだ仔猫に指で牛乳舐めさせる繊細さ（バンクロフトの魂の救済はこのときなされた、という気がする）、殆ど戦場のような銃撃戦に舞い上がる白煙と崩れ落ちる煉瓦。若きバンクロフトはジーン・ハックマンを彷彿とさせる。