[コメント] 転校生(1982/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
あまり個人的な思いだけでレビューするのは良くないが、この作品は私が映画に傾倒することになった作品ということで許して頂きたい。
学生にもなれず社会人になる覚悟もない、青二才のロマンチストが何かに吸い込まれるように観たのがこの映画だった。見終わってから得も知れぬ感傷に襲われしばらく席を立てなかった。映画というものがこれ程までに他人に影響を与えるものだと初めて分かった瞬間だ。
ストーリーは言わずもがなだが、尾道という程のいい日本の地方都市を見事に描写しながら、思春期の男女の距離を男女が入れ替わるというアンバランスな形で描写している。 そして夏特有のジリジリとした焦燥感と、日本人なら誰もが感じることができる郷愁感が常に映画全体を包んでいる。途中不必要だと思えるプロットやカットもすべて包み込んでしまっている。 この感覚はのちに尾道3部作となった「時をかける少女」でも「さびしんぼう」でも感じることはできなかった。むしろ「廃市」に残っていた感覚だ。両者はATGが一番元気だった頃の作品ということでも感慨深い。
大林作品は無論その後も追いかけていったが、「ふたり」「青春デンデケデケデケ」それぞれ感慨深い作品ではあったが、同じ土俵での前者にかなうものはなかった。 また年を重ねてノスタルジーとは個人が結果の産物として感じるもので、映画を作る側が考慮すべきことではないことも良く分かってきた。
最後に。 最後の別れのシーンは男女の別れではなく、思春期への永遠の別れである。 ふたりが再会することはあってはいけない。
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