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[コメント] ジョゼと虎と魚たち(2003/日)

「俺だって歳をとるんだから」という恒夫の台詞には、明らかに(二人で)というニュアンスが含まれていて、それから先に流れるであろう、途方もない時間を感じさせ、胸を打った。
リーダー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







捨てられた本の山に囲まれて育ち、そのせいか見かけよりも相当年寄りじみたこの少女は、その不自由な足ゆえに恒夫が自分を愛し、またいつの日か、その不自由な足ゆえに自分を愛さなくなることを知っていたのかもしれない。

祖母の異常とも言える庇護の下で育ち、その境遇に対する卑屈さから我が儘に育ってしまった彼女には、自分が愛した男が、自分を愛さなくなった姿を見ることが許せなかった。そして怖かった。それゆえ恒夫との、早すぎる別れを選ぶのである。話の上では恒夫がジョゼを捨てたことになっているが、おそらくは彼女のほうから、恒夫が自分に愛想をつかすよう仕向けたのではないだろうか。あのぶっきらぼうな物言いで。

そしてまた彼女は、自分を愛さなくなった男に向かって、それでも側にいてほしいと言うことが出来なかったのである。

恒夫は結局大学の同級生だった香苗とよりを戻すことになるが、それは彼女が、傍目には醜く写ったとしても、自分を愛さない男の愛を手に入れることに執着したからだ。ジョゼにはどうしてもそれが出来なかった。たとえそれが本心だとしても、自分を貶めるようで、我慢ができなかったのだ。

大人びて見えても、やはり彼女は乳母車からしか世界を覗いたことのない、ほんの子供だったのだ。

(評価:★4)

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