[コメント] 華氏451(1966/英=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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奇抜なアイディアを綺麗に整った画で着実に攻めてきたかと思っていたら、ラストの壮絶さにぶっ飛ばされた。「詩的なラスト」「感動的ラスト」と名高いようですが、自分にとっては底抜けにブラックな唖然のラストシーンです。風刺SFというより終末SFだと思う。原作は未読で、フランソワ・トリュフォーやレイ・ブラッドベリのインタビュー記事などを読んだ事も無いので製作者達の意図に関しては全く分かりませんけど、「本の人々」をマジな見解で描いているとは到底思えません。
「人類の財産を守る」という崇高な目的を前に、本を愛する人々が読書本来の楽しみ方を忘れていく姿は可笑しいほどに不気味。例えば、あの余命僅かな老人から本を一冊伝承されている少年。彼が「読書の楽しみ」を知っているように見えますか?彼らは本を守るために本を読む歓びを捨ててしまったのだ。そして、本を読む歓びに目覚めて(ついでに女もおっかけて)抑圧社会から脱出したのにせっかく辿り着いた新天地で今度は本を楽しむ心まで奪われてしまう(ついでに女との距離もまるで狭まらず)という主人公のあまりに悲劇的で同時に喜劇的な末路。極め付きは、思わず目を奪われるような美しい景色をバックに、もはや人間ではなくなった人間が一心不乱に何やらブツブツと言いながらウロチョロしてそのまま「The End」の呆気無いラストシーン。いやはや、とんでもない絶望感。
街では昼夜TV漬けの無思考無感動な人間がゾロゾロ、かたや森では己を殺して自らを記憶装置にし続ける人間がウロチョロ。もはやそこには我々の言う所の人間性はない。人類は物音一つ立てずに姿あるままその終焉を迎えていたのだ。おぉ、なんと凄まじい終末SF映画!!(妄想?)
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