こゝからも、タイトルが出るまでが、かなり長いアバンタイトルだ。既に冒頭から、経済的なストーリーテリングは、全く志向していないことが認識できる。

　『青春の蹉跌』の前年の桃井かおりが純然たるヒロイン。しかも登場から上半身裸でジーンズ姿。彼女の胸をかなりの時間見続けることができる有難い作品でもある。胸をさらけ出したまゝ、うだうだした時間を使うというような演出も、藤田敏八の良さと云い切りたい。

　桃井の父親は内田朝雄で横浜の病院経営者。その弁護士として地井武男が出て来る。内田の邸宅ではリビングでオオコウモリを飼っており、内田は抱いて登場する、というのは面白い。

　後半は原田と大門と桃井、三人での旅のシーケンス、つまり、ロードムービーになる。金のために、白黒ショーを行う場面があったり、露天風呂で混浴するシーンがあったりで、こゝでも桃井は脱ぎまくる。また、山道で見事なドリフト走行をみせるカットがあり、凄腕のスタント（ドライバー）が使われていることが分かる。

　終盤は、桃井を誘拐したことにして、内田や地井から身代金を強奪しようとする展開。三人の車とパトカーとのチェイスシーンは、港の空き地のすごい泥濘に突っ込んでいく。なぜか、大量の野次馬たちが集まって来て、追いかけ合いを見物し始めるのだが、野次馬たちの中にゴジ（長谷川和彦）がいるのは、はっきり判別できる。また印象的な子供のカットがあるが、原田芳雄の息子らしい。全くいい加減なラストシーンだが、行き当たりばったりの感覚が、キャストによく合っているのも良い点だろう。

＃桃井かおりのインタビューによれば、シナリオでは、桃井一人が渋谷の街を歩いていく、というのがラストシーンだったらしい。完成品のエンディングは、原田芳雄の撮影現場でのアイデアで、監督にも相談せず、俳優達だけの合意で演じたものが採用されたとのこと。この話は桃井がちょっと誇張しているような気もするが。