[コメント] 魔界転生(1981/日)
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映画としての構成・起承転結は非常に良く出来ていると思います。限られた時間の中で多くの人物が入り乱れる割には、駆け足という感じがしない。登場人物が歴史上の有名人であるため説明が要らないというアドバンテージこそありますが、基本的に要不要を上手く切り分けた脚本になっているんだろうと思います。また映像も色彩は豊かで、それなりに鑑賞に耐えうるものでした。特にクライマックス、炎の中を飛び回る若山富三郎は至高の美しさです。
ただしこれはあくまで映画の作り手の功であり、それ以前の部分にちょっと引っかかるところがあるんですよね。というのも、魔界衆と呼ばれる彼らに「集団としての目的意識」が感じられないんです。全員が「浮世に無念を抱いている」と言えば聞こえはいいですが、一人は幕府転覆、一人は変わらぬ愛情、一人は村の復讐、一人は女などと、もうみんな目的がバラバラ。とても一丸になって現世を崩壊させようとしているようには見えない。そんな連中が何となくあっちこっちへ行っているように見えるから、ストーリーから緊張感が失われちゃってるんです。
沢田研二がその佇まいの発する怪しげなオーラに見合うだけの演技力を有していなかったことも、緊張感に欠ける一因だったかも知れません。雰囲気は抜群に妖艶なんですが、どうしても千葉真一や若山富三郎に演技負けしちゃうために、天草四郎の恨みの影が薄くなり、結果ストーリーが「柳生親子の決戦」にばかり偏ってしまいました。結局、恨みの物語の割に全体的に「執念」が感じられないってことなんだと思います。
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