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[コメント] ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還(2003/米=ニュージーランド)

登場人物の名前も、背景となる世界のことも、きちんと覚えずいい加減に観ていた私は、このシリーズのいいファンとはいえませんが、それでも惹かれます。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前2作のコメントにも書きましたが、このシリーズの好きなところは、現代に向けてのメッセージを強く感じるところです。もちろんそれの有る無しが、ファンタジーの秀作であるかとかないとかを左右するものではないと思います。

このシリーズは「勇気を奮い起こせ」と何度となく語りかけてきます。同じようなテーマを掲げている作品は他にもたくさんあると思いますが、このシリーズでは「ぼくらは弱い存在だ」「ぼくらは負けてしまいそうだ」ということを、とにかく何回も強調します。そこがいい。強そうに見える人、いや明らかに強い人であっても、常に勝てるわけではない。「いずれは負けてしまうかもね」ということを前提として、それでも「今は頑張る時だ」と、こういうわけです。

1作目では「誰がそれを捨てに行く?」と皆が顔を見合わせている時に、自ら進み出る勇気を描き「戦わずして負ける」ことはしないという姿勢を見せ、2作目では「自分の今は、やがて後々語り継がれる物語の一部になる」ことを自覚し、「いずれは敗北者になってしまうのだから」という諦めを「今だけは決してしない」ことを次の世代に誓う。そして本作の台詞「IT'S NOT THIS DAY(それは今日ではない)」に結実していくわけです。ここが特徴だと思います。「今日こそ勝利だ」というよりも、「(未来に敗北者となろうとも)今日がその日ではない」と語りかけられることに何倍もの説得力を感じます。その精神をこそ次へ次へと引き継いでいけ、というのが3作通して貫かれている。そこに惹かれます。

はるかな昔と現代、あるいはファンタジーの世界とリアルな世界、そこにつながりを感じさせるのが原作のものなのか、映画の独自性なのかわかりませんが、ひとつ、私にとってそれ(つながり)を強く感じさせることが、この映画の中にありました。それは濃厚な土の感触というか匂いです。1作目のフロドたちがボビットの村を出た時から、本作まで、画面からいつもこの世界の舞台である地ベタの感触というのを凄く感じたのです。この土の感触が、私の子供の頃「向こうの山」を探険した時のような記憶と、フロドたちの冒険を強く結び付けてくれました。こういうのは監督の特質なのかも知れません。それがこのシリーズ世界の空間形成に非常に寄与したと個人的には思います。

(評価:★4)

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