コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] その男、凶暴につき(1989/日)

意思表示がアクションで表現されていて映画らしさを満喫できました。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







北野武監督の作品が評価されるのは、テレビ出身の方であるにもかかわらず、表現が映画的だからだと思いますね。監督デビュー作のこの作品をあらためて拝見して、つくずくその映画的な実感が溢れていて感動しました。

とかくセリフとか説明口調の多いテレビの世界ですので、何でもわかり易く説明する演出が求められます。

でもそれが映画となると、大きなスクリーンに映し出されるシーンだけを見せて、観客を楽しませることができることを、北野武監督は本能的にご存知だったのでしょうか。

特にこの映画のラスト。主人公の刑事が殺し屋(白竜)と対峙して殺す。そしてその殺し屋にすがり付く妹(川上麻衣子)までも一瞬に射殺し、自らも撃たれて死ぬ。この倉庫のシーンは見事ですね。倉庫の電気が一瞬全体を明るくしますが、すぐに消されると、ドアから落ちる光に主人公(ビートたけし)の死体だけが写される。

こういうシーンて、なかなかテレビで表現できませんよね。

北野武作品に共通する「言葉ではない」ものが、すでにこの映画でも示されていて、主人公の行動原理はいったいどこにあるのかわかりません。ただ、見る側はなんとなく大ボスは誰かを知っていて、そこにたどり着くまでの経緯を楽しもうとする。でも北野武監督は、そういう余計な描写を一切カットして、突然相手のオフィスまで正面から入っていって目的を達成する。

そういう瞬間的な驚きや迫力がこの映画の醍醐味になっていましたね。

その後北野武監督独特の表現として有名になるキタノブルーはまだこの映画では示されていませんが、瞬間的な感情表現などは、その後の作品に大きな影響を及ぼしたと思われる素晴らしいカットがいくつも見受けられるすごい映画でしたね。

2010/05/01 自宅

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)週一本 緑雨[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。