更に云えば、俺には、延々と繰り返されるゲイカップルの愛憎劇よりも、チャン・チェンの耳についての短い挿話の方が遥かに面白く新鮮に感じた。

ホモだろうが、レズだろうが、愛憎劇には絶対必要不可欠なはずの、惹かれ合う孤独の描出に拙さ・もの足りなさを感じてしまったからだろう。レオン、チャン共に熱演だったが、二人の孤独を足しても、ピアソラのバンドネオンが掻き鳴らす狂おしいまでの弧絶の、足元にさえ及んでいない。