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[コメント] エレファント(2003/米)

彼等は突然、主役の座から降ろされ、脇役だった事実を銃声によって知らされる。
sawa:38

さも何かあるかのような執拗な長廻しのカメラ。だがそこには何も無い。凝りに凝った映像と時間軸遊びに私は何を見出せば良いのか?

繰り返される「日常」と、やがて突然やってくる「非日常」とのあまりにも大きな落差を私達観客は知識として知っている。

この落差を描く為に本作は膨大な時間を使って「日常」を描いてみせた。その膨大さが私には理解出来なかった。選ばれた者ではなく、ソレは誰にでも襲いかかってくるのだという「わかりきった」事を描くのに、何故こんなにも映画的に退屈な時間を過ごさなければならないのか?

いくら映像的に美しかろうが、いくら技術的に素晴らしかろうが、つまらない物はつまらない。高校生たちの意味など無いという台詞が垂れ流される時間。

事件の真相なんて結局は誰にもわからないんだろう。この作品もソレを突き詰めるような無謀なことはしない。わからないモノはわからないで良い。ただ、何故だか本作は僅かに犯人たちの心情やら背景やらに踏み込んでいる。この中途半端にイライラさせられる。

「日常」が突然に断ち切られる衝撃を描くなら、犯人は姿の見えない化け物や怪獣として描いても良かったと思う。あえてシャワー室で抱き合う少年の姿を描く意味が理解出来ないのだ。そう、怪獣映画では多くの市民が踏み潰されて「日常」を断ち切られていくシーンが見せ場である。そんなモブシーンでのエキストラたちの「日常」なんて描かれない。そんな意味ではエキストラたちの「日常」を描いた貴重な作品なのかもしれない。

本作では多くの生徒の視線(肩越しだが)で同じ時間を描いた。つまりソノ時点で彼等は皆、誰もが主人公だった。彼等は十数年の人生を主人公として生きてきたのだ。同一時間の別視線という構図はその事を巧く表している。

そこに「恐怖」がある。彼等は突然、主役の座から降ろされ、脇役だった事実を銃声によって知らされたのだ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)太陽と戦慄 mal くたー[*]

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