世界観まで到達できんかった、残念な事に。終始、客観的にしか見られなかったので、レビューも内容には触れられない。

メッセージ性重視なのか、娯楽重視なのかハッキリしない…しないままで絵だけ綺麗な分だけ質が悪い。「綺麗な絵」ってだけで評価するよ、ちゃんと娯楽になってるよ。それじゃダメなの？　綺麗な絵を作る理由やら大義名分、ましてやそれを説明するための冗長な演説なんて要らない。むしろ、そういう要素が多すぎて娯楽要素に水を差しちゃってる。自信ないんだろうか。メッセージ要素も娯楽要素も中途半端にしたくなかった？　でも、どっちも立てようとして共倒れって印象。小器用にバランスを取ればいいってもんじゃない。事実、そんな根性が受け手にバレバレやないの。なめちゃかん。「仏作って魂入れず」って言葉があるけれど、これは「仏を作ったら魂を入れろ、入れればOK」的ななめた根性が見え隠れする。これはもう「魂が無いのなら最初から仏なんて作るな」って戒めだと思うんだ。

紀里谷和明さん…なんだろなぁ、この人。職人としては一流なんだろうけど、作家としてはなぁ…もともと、どういう動機で物作りの道へ入ったのか知らんけど、どっぷり職人に浸かってから、いまさら作家のまねごとしても…即物至上主義の世なら絵でゴリ押しできるかも！とでも思ったのかなぁ。いったい、どうなりたいんだろ。人のメッセージを具現化するだけで満足できなかったのかなぁ。

…なんてな風に作品の外側にしか意識を向けさせない時点で作品としては×でしょう。絵は“綺麗”でしたよ。中二病的熱量を悪びれず込めている天然っぷりも好感が持てる。それのみで破格の３点だわ。技術的にどーだかこーだか言う人もいるけど…そんなんじゃないって。必ずしも絵の善し悪し=技術力じゃないんだから。箸じゃ足らずに、わざわざピンセットを持ち出して、重箱の隅をつついてるようなもんだわ。