コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] パッション(2004/米)

「美しい」(レビューはラストに言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本作を観たローマ教皇が聖書に忠実と言ったとか言わなかったとか(結局は発言を否定したとか否定しなかったとか)で話題になった。マグダラのマリアがどのような経緯でキリストの側にいたかすら知らないぐらい無知な私には、ディテールが聖書に忠実かどうかはわからない。しかし、キリストが鞭打たれる場面において、何度も弟子たちへの説教シーンがフラッシュバックされるが、新約聖書にあんな感じで行ったり来たりする文面は存在しないのではないだろうか。

この作品をアメリカで観た。現地で下手な英語を使って必死に伝えようとした感想は、聖書に慣れ親しんでいない自分にとっては聖書に忠実であるかないかはさほど重要ではなく、ただあのわかりやすく執拗な暴力シーンによって、フラッシュバックで登場する説教内の言葉の重みを無効化させようとしていて(ワンショットだけの復活シーンで今までのすべての暴力シーンが払拭されるとは到底思いがたい)、反ユダヤうんぬんよりもそのことをとても薄気味悪く感じる、ということだった。

そして本作を美しいと感じる方に、あれだけの受難に遭っても意思を曲げない精神を美しいと思うのか、ピエタが美しいのと同様に聖書の話ゆえに美しいのか、それとは別に暴力シーン特有の美を感じているのか、ということを聞きたかった。もちろん美の根拠を言葉で表すのは難しいし、いろいろな要素が混ざってはいるのだろうが、失礼にあたらない程度で少しでもその美を理解するための回路の端っこでも見たかった。(実際のところは英語力の無さゆえに、私がその相手の方を非難するのではないかと思われ、深い話に入る前に周りに止められてしまったが…)

いくら聖書を知らないとは言っても手や足に釘を打たれることぐらいは知っているのだから、次にどんな残虐なシーンが来るのか容易に予想できてしまう。ゆえに率直なファースト・インプレッションは野蛮な作品、ということだけだった。しかし、アメリカに関心を持つものとして、聖書が頭に刻み込まれていないからキリスト教を信仰している人たちの気持ちなんかわからない、というだけでは済ませたくない。映画の観方なんて百人百様、人は人、自分は自分、なんて当たり前のことだが、それだけではこれだけのアメリカでのヒットを理解するうえで何の役にもたたないと感じた。本作が日本でも公開されることに驚いたが、他の方が本作を観てどのように感じるのか、そこにとても関心がある。

*表題に使ってしまったが、「美しい」という感想を持たれた方を揶揄するつもりはまったくない。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)IN4MATION[*] ちわわ[*] Azumi[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。