[コメント] スイミング・プール(2003/仏=英)
綴られるのは中年インテリ女の嫉妬と願望が呼び起こす妄想であり、そのイメージの断片に何らかの因果がありそうに見せつつ、意味が生じる寸前に関係性を断ち切ることで、いかにもミステリであるかのように見せるというフランソワ・オゾンの高度な遊戯映画。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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実は登場人物や事象には、ほとんど因果関係などないのだろう。そこにあるのは、仕事に費やしてきた才能と労力が生んだ現実的成果と、未だ燃え残る男への恋愛感情という非理性的欲望と、そして取り戻すことのできない若さと残された時間という解決不能な人生を前にして、たじろぐ中年女の焦りと妄想だ。
そんな妄想が生むイメージで綴られる幻想映画はいくらでもあった。オゾンは、そのイメージをつなぎ合わせて一編のミステリのように見せかけようという映画的遊びを試みたのだろう。だからこの映画はミステリの体裁をしているようでいて、実は謎は謎のまま放置され、はなから答えなど準備されていない。
そう、スイミング・プールはあくまでも人工的な海の代替物でしかなく、そこで得られる開放感が大自然の矮小なフェイクであるように。だから、この作品の謎解きを試みるのはプールを制覇して海の偉大さを語るかごとく意味を持たないのだ。
くれぐれも、微に入り細に入った高度なテクニック酔わされた上に、有りもしない答えを探し回るなどというオゾンの手の内にはまらぬように。オゾンの噛み殺したクスクス笑いが聞こえてくる気がする。
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