[コメント] スクール・オブ・ロック(2003/米=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画の子どもたちと同い年の頃、ハモニカや縦笛が苦手で、合奏祭ではいつも何とかして太鼓かシンバルにまわろうと画策し、楽譜が読めず、最後まで長調と短調の違いがわからなかった僕にとって、楽器は全く楽しい物ではありませんでした。むしろ苦痛に近かったと言ってもいい。
それが中学に入りブルーハーツなんかを聞き出し、ピストルズに流れ、英米ロックをあちこちほじくり返し出すと、途端にギターなんかを買ってしまったりするのですが、それでもまだまだ先は長い。Fが押さえられない。教則本に載ってる「いちご白書をもう一度」とかをチマチマ弾こうとしてるだけなのに、Fが押さえられない。挫折。ロックでも挫折。一般社会からドロップアウトした世界であるはずの、ロックでも挫折。いや厳密にいえばロックに辿り着く前に挫折です。ギターはホコリまみれ。楽器はやっぱり向いてない。
だけどそれからしばらく経ち、「ギター持ってる」なんて話から友人たちのバンドに入れてもらうことになっちゃったから焦り出します。ここで初めて必死になる。そうすると何とかなるもんで、気張ってFもクリアし、気付けば曲目も「いちご白書」から「Anarchy in the UK」なんかに出世。家庭用ミニアンプでちょっといい気になったりしてきます。
そして初めて入る練習スタジオ。ちょっと照れながらみんなで演奏した瞬間にもの凄い驚いた。4人で1曲を演奏するのって、1人で弾くのの何十倍も気持ちいい。みんなが違う音を出して、それが一つの曲になって耳に飛び込んできて、しかもその中には自分の出した音もあって、それが身震いするほど気持ちいい。そこで初めて「楽器ってこんなに楽しかったんだな」って思うんです。みんなで演奏する楽しさ、気持ちよさを、初めて理解するんです。
それがライブなんかになった日にはあなた、気持ちよさが隊列組んで襲ってくるってな勢いですよ。オープニングSEとかまで自分で作ってね。髪の色まで変えちゃって。いざステージに立っちゃえば自分の作った曲が演奏できるわ、音量はドデカいわ、スポットライトは当たるわ、カッコいい(と思ってる)衣装は着られるわと。もう自分の演奏の稚拙さなんて一瞬でどっかに吹き飛んでしまいます。
今作にはそれがあったんですよね。ハッキリ言っちゃえば他に観るべきところなんてあんまりない。ライブのシーンまでは「普通」の映画。ちょっと面白いけど騒ぐ程のことのない「普通の」映画。それがステージのオープニングでスクリーンにアニメーションが映ったところから、ガガガーっと気持ちよさが伝播してきちゃったんです。僕の作ったオープニングエフェクト。僕の作った曲。僕の出してる音。僕の作った衣装。僕の作った照明。私の声。私のステップ。もう一気に来た。テンションが「普通」から「気持ちいい!」に「ギュイーーーン」って上がって、そのまま涙出ました。
まぁ終わってみればまとめ方もまた大したことはなく、「よく出来た映画だ」なんてことは全く言えない作品ではあります。ロックのあり方もそれで正しいのかどうかはちょっと疑問です。ただとにかくうらやましかった。子どもたちがうらやましかったんです。音楽は楽しい。その場に一人でも多くの人がいればもっともっと楽しい。それが存分に味わえたので、あとは大目に見ることにします。
まぁただ、Fをクリアしてもギターソロで挫折するってことは覚えておいた方がいいです。僕根気無いんです。
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