[コメント] トッポ・ジージョのボタン戦争(1967/日=伊)
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まず初めに驚いたのが、トッポ・ジージョがスポンジで出来ていた事!パペットやクレイアニメが好きで、ある程度色んなものを見てきたつもりではいましたが、未だかつてスポンジで出来たパペットは見た事がない!このスポンジという素材が生む独特の動き(頭からギューと潰して困ったような顔をさせるところとか)はとても新鮮で面白かったです。
そしてタイトルが出るまでの冒頭は影を有効的に使い、まるで舞台を見ているような不思議な映像で、これもまたとても面白いと思いました。この冒頭でジージョの愛くるしさを存分に味わい、またパペットアニメらしいシーンも堪能する事が出来ました。ただ逆に言うと、アニメーションとしての表現方法や面白さは味わえるものの、ストーリー的には特に秀でているところもないかな…と見ていた私が衝撃を受けるまでそれほど時間はかかりませんでした。それこそ頭にバケツを落とされたような衝撃が待っていたのです。タイトルを見ただけの私の勝手な想像は"色とりどりのカラフルなお洋服のボタンを投げ合って喧嘩する"とか、その程度の軽いものだったからです。その"ボタン"がまさか"核ボタン"だったなんて・・・!
ジージョが夜の町に出てからは、どんどんストーリーに吸い込まれていきました。それなのにカットや人形の動き等、アニメーションとしての醍醐味も失速する事なく味わえ、あっという間の90分でした。本当にあっという間でした。
後半を過ぎてからのシビアで哀しい展開には、前半で見た穴の開いた靴下までもがとても悲しく、そして愛おしく思えました。冒頭の可愛らしいピンクのまぶたが、最後には薄汚れた灰色になり、ふわふわだったまつげやチャームポイントの前髪もボロボロのボサボサ。こんな泥だらけでボロボロになったパペットなんて見た事ないかも知れない。そんなぼろ布のようなジージョが、割れた風船に近寄り、無言でじっと風船を見つめるシーン。彼が計り知れないショックを受けた事を、肩で大きく息をしている事で表現します。表情を変える事なく悲しみを表現するこのシーンはとても素晴らしかったと思います。そしてジージョのアップで流れた涙はとても印象的でしたが、やはり薄汚れた彼のまぶたや前髪のインパクトの方が強く、涙を誘いました。どうして温かい水じゃないのかなと水溜りをパシャパシャやっていた彼が、何も言わずに水道の蛇口をひねり無言で風船を洗ってあげるシーンなんかは何とも言えない哀愁で、私はぅーぅー泣いてしまいました。
ただラストがあまり好きではなく、ゴムと化してしまった風船を家に持ち帰り満足げにしているところが、どうも現実逃避をしている風に映り、事実を受け入れられずにいるのかなと痛々しく感じました。私にはどうも前向きに捉える事の出来ないラストでした。
ラストも含め、とてもシビアで決して楽しいお話とは言えませんが、いつか子供が生まれたら、一緒に観たいなと。この作品を観て悲しみを感じる事の出来る子に育てたいなと。そう思いました。ちなみに私は小学生の時、トッポ・ジージョに似ていると言われたのがきっかけで、トッポ・ジージョのソフビ人形とか結構持ってます。今回念願の動くトッポ・ジージョが見られてとても嬉しかったです。
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08.03.18 記
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