矢口監督って、決して上手い監督とは思わないんです。ただ、自分の力量に合ったフィールド選びが上手なだけで（それも上手いうちに入るんだったら上手いんだろうが）。確かに無名同然の役者を遊ばせてる自然な感じはなかなかいいんですけど。これってどんな監督でもできることでは決してないですものね。

ただ、個人的にどうしても気に入らない事が一つ。それは、各地で絶賛されている上野樹里。私はどーしても、彼女の魅力が判らないまま、結局ラストを迎えてしまった。『ウォーターボーイズ』では、ほぼ無名の役者達が本当に生き生きと自然にバカ騒いでるのが非常に心地好く感じたので、今回もそれはゆるぎないものなんだろうなと思ってしまったのもいけなかったのかもしれないが……。

彼女だけ、どうも浮いてる感じが。いや、なんだろ自信があったのかな？自分は他の人よりできるのよ！みたいな。自分、かなり斜め目線で僻みっぽい人間なんで、そういう風に見えちゃったりるすんですよね（笑）。変わりに、彼女以外の全員は本当に素晴らしいと思ったんですよ。上野樹里のキャリアからくる“自信”みたいなのがちょっと嫌味臭くて足並み乱してるような感じがして、私はどうにも駄目でした。

あ、これは本当に個人的に感じた事なんでお聞き流しを。

前回、『ウォーターボーイズ』で出なかった監督の下手部分ってのが、今回覗いてしまった感は否めないんですけど、それでもこれはこれで楽しかったです。

やっぱり、実際に彼女達は練習してあそこまで演奏できるようになったわけですから、それだけで非常にドラマチックですよ。

前半の展開は退屈で（私はそれこそ上野樹里の第一声に問題があったと思ってるんですが）、もうどうしようかと思ったんですが、後半の畳み掛けるように上がるテンションの高さは思わず前のめりになるぐらいのパワーがありましたね。何だかんだで最後は泣きました。青春に浸るというのもいいものです。

ただ、この監督のお陰で世の中に皆で１つのものを作り上げる的“青春映画”なるものが乱立する時代になりましたね。出来の良し悪しはともかく、何となく邦画界にもネタ不足があるのかな……なんて考えている今日この頃です。