[コメント] ターミナル(2004/米)
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入国理由を問う入国審査官の描写から本作は始まる。 彼らの答えは、ビジネス、観光、航空機のスタッフ、そして、集団不法滞在・・・。
英語をほとんど話せない主人公ビクター(トム・ハンクス)の入国理由は、そのどれも当て嵌まらない。彼は「ホテル・ラマダ・IN」以外回答できないまま、不幸にも祖国クルコウジアの政変により、ターミナルから出ることが出来なくなった。
ビクターにはその気になれば出る空港を出るチャンスは幾らでもあった。しかし、彼は「待つ」ことを選んだ。 もちろん、彼はそこで暮らすことが目的ではないし、人と知り合うことが目的でもない。ましてや政変が起きたからと言って、故郷に帰ること、故郷から亡命することもなかった。
そんな彼が大事に抱える「空き缶」に対する秘められた言葉。「ジャズ」と「約束」。空き缶がビクターを支える源であった。
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ターミナルで何ヶ月も生活するうちに、ビクターには掛替えの無い親友が出来た。それは彼の「目的」(=空缶の約束)を揺るがす存在、すなわち弱みを持ったことを意味する。やがて、それまで誰にも言わなかった秘密を、思いを寄せる恋人に明かした。
ところが、彼の信念に臆したのか、特別入国ビザを置き土産に彼女は愛人の元へ去ってしまった。 そのビザには監視長のサインが必要だったが、監視長は親友をだしに帰国を迫る。 ビクターは帰国を決意した。 しかし、親友は彼の帰国を許さなかった。
ビクターが、約束の、親父の、40年の重みを再認識したとき、ターミナルのドアは開いた。
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<<雑感>>
トム・ハンクスの過去の作品と比べると、『フォレスト・ガンプ』が「自分探しの旅」、『キャスト・アウェイ』が「自己の喪失と再起」を描いているのに対し、同じ一人旅でも本作は「人と触れ合い」ながらも「約束」の重みを描いている。ドラマ性は既述2作ほど高くは無いものの、ターミナルでのビクターの機知や友人との交友には心が和んだ。
ラスト間際の「約束」と「親友」に挟まれたビクターの葛藤と、身を挺した親友の回答の描写は涙を誘う。 この部分は本作最大の見せ場だと思うのだが、エンディングが出国検査場や航空機内ではなく、ホテルから空港へのタクシー車内であったことからも、本作の主題は「出会いと別れ」や「主人公の成長」ではなく、純粋に原点、すなわち「親との約束」であったと言えるでしょう。
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