[コメント] 風櫃〈フンクイ〉の少年(1983/台湾)
「青春時代」はいつ始まって、いつ終わったのか?という事を最近良く考える。私はまだ20半ばであるが、単調なサラリーマン生活で、とても青春を過ごしているとは思えない。大学を卒業し、社会人になる直前にはよく、俺の青春時代は終わったのかなあ・・という感傷に襲われた。学生時代というモラトリアムの終焉を儚く感じていたのだが、そんな時期にビデオで見たのが本作である。当時の自分の心理状況と、「兵役」という形で社会に参画していく阿清の、少年時代への別れと、社会と対峙した困惑が似ており、大変心を動かされた。特にラストシーン、阿清の屋台での時の流れに逆らうかのような呼び込みの掛け声と、市場での人々の生活の描写が素晴らしかった。クラシックのヴィヴァルディ「四季」とバッハの「G線上のアリア」が作品中に効果的に使われており、音楽担当・エドワード・ヤンのセンスが光っている。
ホウ・シャオシェン監督の作品は『恋恋風塵』や『非情城市』『憂鬱な楽園』など傑作が多く世界的な評価も高いが、本作では監督初期の作品で技術的に洗練されていない部分が見られ、監督の自伝的な青春四部作の最初の作品ということもあってか、多少センチメンタルな面が強い気がしないでもない。このあたり、批評家に言わせると巨匠・侯孝賢も「まだまだ青かった」という事になるのかもしれない。しかしロングショットの多用、アングルを固定したカメラ回しなど、彼が独自の作風を確立した記念すべき作品であり、彼の監督業における輝かしい青春時代に位置する作品だと思う。個人的にこの作品はマイベストの5本の指に入る作品であると同時にホウ・シャオシェン監督の最高傑作だと思う。あまり一般的に作品名は知られていないが、客観的に見ても青春映画というジャンルの中でかなり重要な位置を占める作品であることは間違い無いだろう。ロケ地の台湾・澎湖島へ4度も旅に出かけてしまうくらい思い入れのある作品です。
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