[コメント] 犬猫(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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井口奈己の“初”自主作品である8mm版『犬猫』のリメイク。8mm版は自主映画ながら高評価を受け劇場公開もされている。現在は「封印状態」にあるらしく残念ながらお目にかかることは出来ない(2004年12月公開当時)。このリメイクは劇場用映画でありながら画面がはスタンダードサイズで、「スタンダードでなければならない意味」がところどころに散りばめられているのだ。奥行きはあまり感じられないものの、味があるし温かい雰囲気が感じられる。もっと具体的に言えば坂道のシーンや河川敷のシーンで見受けられるような感覚である。専門的な知識に乏しい為、その「感覚」でしか言えないのだがアメリカン・ビスタよりもこちらのサイズのほうが遥かに素晴らしいはず。
ヨーコとスズは正反対の性格。たった一つの共通点は「必ず同じ男を好きになる」という点だけである。そんな、そうも気の合いそうにない二人がアベチャンを介して共同生活を始めることになる。……しかしながら、怒号が飛び交ったりすることは無い。どこか和やかな印象を受けるほどだ。それは何故か、おそらく自分の世界観を固持しているからだろう。スズがヨーコにワンピースを贈る場面があるが、姉妹にも見えてしまうほど。アベチャンの部屋で対面した当初こそギクシャクしたものの(詳しく言えばヨーコが。)彼女達は「穏やかな波」そのものだった。しかしちょっとした波乱が起こる。お互いの元カレである古田の存在や三鷹の存在が引き金になってしまうのだ。しかし彼女達は声をあげて怒らない。あくまでも自分の世界観を固持する。誰にもぶつかることなく最終的には解放していく。そしてまた、共同生活は続いていくのだ。定まったプロットではないものの、場面の一つ一つが巧みな数珠繋ぎによって成立している映画だろう。カメラはワンカットを貫き通す。音のレベルは思い切りデカい。ただ、それに慣れさえすれば(自分はぐいぐい引き込まれたが)心地良さは自然と充満していく。
主演二人は最高の演技をしてくれた。「脱力」をテーマに掲げて演じてもらったようだが、まさに脱力そのもの(笑)。(良い意味で)とても演技とは思えないし、また対照的な二人が本当に素晴らしい。榎本加奈子は新境地としか思えない役柄であり、これからまた活躍をしていってほしい。藤田陽子は……カワイイ(笑)。自然体な姿が素敵。
良い点をあげるとキリが無い……。
小品でありながら傑作。
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