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[コメント] 約三十の嘘(2004/日)

豪華役者陣の熱演を台無しにする安い脚本。性善説を説きたいなら詐欺師の設定は捨てるべきだ。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 泣くほど誰かとつながりたいなら、本当に心の隙間を埋めたいのなら、まずはそのお金を返しなさいって。こんなボンクラどもに騙されて金を巻き上げられた北海道の人たちがホントに可哀想だ。ホントに。詐欺師風情が人の再生など高らかに謳いあげるでないよ。

 作り手は「人間味溢れる犯罪者」を画面に登場させることで観客の共感を呼ぼうとしたのだろうが、まずこの試みが絶望的に失敗していると思う。少なくとも観客には、もともと詐欺師に共感する素地はないのだ。映画に登場する犯罪者が観客の共感を得るためには、その罪を犯した遠因なり技術なり覚悟なり悲哀なりという、一般論で説明しうるだけの「必然性」がなければならないはずで、そこをすっ飛ばした瞬間に映画の中の犯罪者は存在証明を失うのだ。キャラクターとして成立しないのだ。この映画には、詐欺師が詐欺師である理由が完全に抜け落ちている。行動原理の根本がない。だから彼らが何を思い、何に涙したところでまるで説得力がないし、説得力のない人物の行動には魅力がない。

 私は原作の芝居は知らないのだけれど、この設定で『約三十の嘘』なんてタイトル付けられたら、それはそれは超面白いコンゲームを期待するでしょう。コンゲーム映画の作り手と観客の立ち位置は、そのまま詐欺師と被害者に置き換えられるものなんです。観客である私は緻密な嘘に騙されて溜飲を下げ、そのプロフェッショナルな手際に酔い知れたいのです。この程度の作りこみじゃ北海道市民は羽毛布団なんて買わないし、私たちだって騙されないよ。ミルキーちゃんの「あんたたちは詐欺師として2流だ!」って言葉を、製作陣にそのまま言ってやりたいよ。観客をバカにするのもいいかげんにしてもらいたい。

 つーかせめて北海道ロケくらいしろっての。

(評価:★2)

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