[コメント] 銀のエンゼル(2004/日)
独身時代、岐阜の片田舎に住んでいた事がある。仕事が終わり遅い夕食を取ろうとしても、辺りは真っ暗で小さな町は寝静まっていた。そんなある日、町にコンビニが出店した。町で唯一のコンビニ。私は毎日通った。けっして採算が取れてはいなさそうな店だったので、絶対に潰しててはならないと私は決意した。
休日は知り合いが誰もいない土地で、誰とも会話を交わさない日も珍しくなかった。店のおばちゃんが「お弁当温めますか?」と問うた時、とっさの事で口が開かなかった事もあった。肉体的に声が出なかったのだ。
深夜のコンビニは擬似的なのかも知れないがヒトとのふれ合いが体験できる場だった。事情があって9年間努めた会社を転職する事になった時、選んだ会社が本作と同じコンビニ企業だった。そして神奈川の川崎の工場街のコンビニで店長を勤めた。
小日向文世の制服姿が自分とダブった。X'masの翌朝に通勤ラッシュの流れとは逆にケーキを山程抱えて自宅に帰った記憶。除夜の鐘はおでんの補充をしながら聴いた記憶。サンドイッチの発注を一桁多く誤発注した苦い記憶。
短期間であったがコンビニでの仕事は楽しくもあり、辛くもあった。数ある接客業の中でも最も無愛想だと思われているコンビニ業界ではあるが、後に他業種へ再転職する際の面接で私は言い切った事がある。コンビニのパートのおばちゃん達こそ最高の接客をしていると。毎日固定の客と同じ時間帯に顔を合わせ、その嗜好まで把握する。常連客は店員を勝手に擬似家族・擬似恋人として合いにくる。そう、田舎の村の雑貨屋が原点となるのだろう。
映画の中で西島秀俊が客に「こんばんは」と声をかけると、客も一斉に「こんばんは」と返すシーンがあった。いいシーンだった。あれなんだよな。元仲間としてアノ店を何とか助けてやりたいと真剣に思わされた2時間だった気がする。
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