[コメント] エル・スール −南−(1983/スペイン=仏)
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日常とは、油断すればすぐ壊れてしまいそうなものの上にあるのかも知れない。そんなことを考えてしまった。
父への愛慕、信頼、安心そんな日常にあった少女が、父に秘密を知り、秘密を持ち、疑問を抱く。そして自らも、否応無く恋というものに無縁ではいられない年頃となり、少しずつ父への思いが変わり始めていく。
「ミツバチ」は少女が自分の中に、自分を見つけようとしていたが、この作品は少女が父の人生の中で自分を探そうとしているように感じられる。自分と父親との繋がりを見つめ直し、歴史の中に自分を位置付け様とし始めた…。その意味では、「ミツバチ」の続編と言って良いと思えるのだ。
ただ、少女が父の過去を探しに出かけるところでラストを迎え、その結果はわからない。しかし、この作品はそれで正解だと思う。「ミツバチ」でアナが「私はアナ」と気付くところで終わった。言わば自分の存在を自覚するところで終わっている。「エル・スール」ではエストレリャが「(父という)自分に関わる存在」を強く自覚するところで終わっている。
二つの作品に共通するのは、どんな事実を少女がどう自覚したのかではなく、少女はどう感じ、どう生きていこうとするのか?という観客への問いかけになっていることだろう。おかげで、アナと同様、エストレリャはこれからどういう人生を歩むのかずっと気になって仕方が無いのだ。
それにしても…、この作品を観て、改めて『ミツバチのささやき』が強烈なインパクトを持った作品だったと思ってしまう。恐らく、「ミツバチ」に出会うことなくこの「エル・スール」を観ていたら、違った感想になっただろうと思えて仕方無い。
結果、この作品は「ミツバチ」の見事な続編だと結論づけたくなるので候。
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