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[コメント] Ray レイ(2004/米)

レイ・チャールズへのリスペクトに溢れた作品。レイが、あらゆる感情を即興で音楽にしてきた様子を感じとることが出来る。彼の苦悩といいジェイミー・フォックスの熱演は素晴らしい。鑑賞後ただちにサントラ購入。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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冒頭。シアトルに向かうバス。座席は黒人と白人で隔離されていた。盲目というハンディキャップの克服は並大抵のことではなかったのだろうが、レイは人種差別問題には関心を示さない。そんなレイの心に影を落とすのは弟の思い出。レイはドラッグに頼ることでギリギリの線で音楽活動を維持してきた。

麻薬所持の現行犯。レイと音楽とを結ぶ線が切れ掛かっていても、レイはドラッグを止められない。「あなた(の心)は“盲目”だ」との妻の言葉。レイはドラッグと闘う決意をする。

盲目の鑑真の例えにあるように、(盲目であろうとなかろうと)心の目を啓くってのは仏教で言うところの「開眼」の境地にあたる。そんな境地を得た人が果たして如何ほどいるだろう? 正直「レイの心は盲目だ」なんて、例え彼女がゴスペル出身でキリストの洗礼を受けていたとしても良く言えたものだと思った。この辺り(心眼の定義)は西欧的感覚なのだろう。

健常者の誰しもがぶつかっては曖昧にする心の壁。それは人を時には排他的(差別)に、時には自暴自棄(ドラッグ)にさせる。いずれにしても直面していないことには変わりはない。この状態が妻の言う「盲目」にあたるのだろうが、レイは盲目であるが故に人並み以上にそれを感じ取り、それと向き合うことに恐怖していたのではないだろうか?

レイが目の見えていた頃の記憶のみを引き摺ると言うのは、幸いにも健常者の私にはあまり実感が出来ないけれど、所謂トラウマというよりむしろ、普通の人の少年時代の思い出とは比較にならないほど記憶が濃縮された故なのだろう。その記憶(弟と母そしてピアノの記憶)を忘れられないのは無理もないことだと思う。妻の言葉がレイを救ったように感じられなくもないが、それはあくまで切っ掛けで、恐怖から彼を救ったのも、禁断症状と闘うレイ自身、すなわち心の中の母と弟と、音楽への想いであったように思う。

人種差別に無関心だったレイが公演を中止にしたその瞬間こそ、(盲目ではない)レイの本質を垣間見れたような気がする。故郷で名誉を回復したエンディングはまさにその現れだろう。

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レイ・チャールズの死後間もないこともあり、遺族の意向もあってだろうか、レイの遺族よりもレイの亡き家族(母と弟とレイ自身)へのリスペクトを感じた。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ペペロンチーノ[*] Keita[*]

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