[コメント] パッチギ!(2004/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
『ガキ帝国』も『岸和田少年愚連隊』も確かに面白く良い映画だったのだが、どちらかといえば個人的に相容れるタイプの映画ではなかった。
その暴力性でもなく、そのやんちゃぶりでもなく、これらの映画の目的が足りないことを感じていた。いずれの映画も、作者の回帰思考が強く、その趣味に基づいて作られている。面白い、確かに面白い映画なのだが、「だから何?」という点のいて相容れないものがあった。
元来映画の面白さとは理屈ではない。その画面に生まれる何かがそうさせる。『ガキ帝国』も『岸和田少年愚連隊』も面白さではこれまでにないタイプの映画だったが、その先が見えなかった。
今回の『パッチギ!』には明らかに前2作とはかけはなれて、民族問題、紛争問題、暴力問題をいずれも当時の世情を見せながらわかりやくすしている。
日韓の高校生の抗争の中で、”天下統一”対”祖国統一”という対比が象徴的だったが、サッカーにせよ野球にせよ背負っているものの違いを一瞬にして表現する、とても面白いシーンだった。
互いの間に流れるどろどろした大きな川のような隔たりがあって、それを受け入れることができない何かがあって、その周辺で民族を超越した愛が存在する。最後のシーンに向けて愛という言葉が”イムジン河”のメロディーに乗って押し寄せてくる。
沢尻エリカの存在がこの映画のほぼ全てを支えている。暴力連発の映画の中で彼女の魅力が際立っている。
韓流ブームとは異なる、日本の過ぎた時代の対朝鮮問題を浮き彫りにする素晴らしい映画だった。
泣けた。
[追加]2007.9.24 BSで再放送されていた。
前回のコメント通り、私の相容れる映画とは言えないが、題材の真意をあらためて認識せざるを得ない映画だ。
『パッチギ!』という言葉の奥にある民族の違い。そしてその時代の相違を認識したのだ。
オダギリ・ジョー演じる大学生の存在が時代背景を物語る。主人公にフォークソングを教え、外国を旅歩き、帰ってきてフラワームーブメント(要するにヒッピー)に傾倒する、少し大人の存在が良い。この存在が時代を映している。
そして(何度も同じことを書くようだが)沢尻エリカさんのへたくそな演技が素晴らしい。この映画そのものである。
兄は日本人の女性を愛し子供をつくり、妹の(沢尻エリカ)は、純朴な日本人男性と恋をする。
この交差によって、今、時代がゆるやかに流れ変わりつつあることを覚えるのだ。
冒頭、主人公の教師が毛沢東の言葉を引用し共産主義にのめりこみ、ロシア人と結婚?し、似非共産主義を標榜するあたりが団塊世代の大半が同じような思いをしたことに後ろめたさを感じることだろう。
「イムジン河」のメロディが永遠に平和のために歌われることを強く希望する。
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