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[コメント] パッチギ!(2004/日)

4年前のW杯日韓大会最終日に『ユリョン』のコメントを確信犯で投稿した。そして本日4年後の今日、テポドン撃たれて総連と民団は和解を白紙撤回したそうです。
sawa:38

ここは映画作品のレビューであって、政治や歴史を語る場でないのは承知しています。ただ、4年前にあえて偽善的なコメントを投稿した自分としては、この4年間に起こった凄まじいまでの「韓流ブーム」とその反動ともいえる「嫌韓論」のジェットコースターのような隣国感情に戸惑いを隠せません。

4年間、人間として成長出来ていなかった自分がここにいます。だからと言っては卑怯なのですが、本作で井筒和幸監督が「声高に」主張する歴史観に違和感を覚えるのです。

本作の映画作品としての出来は大変良かったと思います。ベタなつくりで特筆すべき点ではないかも知れないが、ラストに向かって収束していくスピード感はまさに「映画」そのものだし、エンディングの「その後」をのんびりと描き分けるリズム感は見事でした。30年前の監督のデビュー作『行く行くマイトガイ 性春の悶々』に最低点★1を献上した私にとっては、失礼な言い方ですが「ずいぶん上手になったなぁ」と・・・・

で、そんな「巨匠」になられたはずの監督なのに、所々に挿まれる「歴史観」(あえて政治的メッセージとは申しません)。それはそれで良いのですが、立ち飲み酒場での「朝鮮戦争」やら通夜の場での「朝鮮人連行秘史」。これらの説明的な「演説」が映画作品としてのリズム感を一気に喪失させてしまっている。

歴史を知らないノンポリの日本人は罪である。それは同感であり、監督が伝えたい「伝言」は必要だとも思う。但し、いくらなんでもソノ直接的な描写はリズムを壊す。まるでATGの左に寄った映画みたいじゃぁないか。

本作には「朝鮮人だから」といって差別するキャラクターは登場しない。対立する日本人高校生たちは単純に武力衝突であり、冒頭の長崎の不良たちが沢尻エリカに絡むのも単純にナンパの部類に入るものだった。しかし主人公の少年は通夜の席で突然に「差別問題」を突きつけられる。

それが監督の自虐史観に基づくものであるのは一向に構わないが、あまりにもバランスが悪い。それならば『月はどっちに出ている』のように「俺は朝鮮人が嫌いだっ!」というような台詞を放言する日本人キャラを登場させる事で監督の歴史観をより強調しても良かったのではないだろうか?

ここまで真正面に在日問題に切り込んだ「かのような」作品を撮った気概は大したものだと思う。そして幾人かのコメンテーテーが指摘するように、そこまで風呂敷を拡げた作品ならば、ならば、「朝鮮人になれる?」という問いや、通夜の席での言葉や、祖国に帰り損なった事の是非、そういった問いかけに少しぐらいは答えを出して欲しかった気もするのです。監督なりの・・ね。

純愛・青春映画として一級のラインをまたいだ作品であるだけに、あまりに多くの問いかけを放り投げたままにしてアノ「その後」のラストじゃ甘過ぎるんじゃないだろうか?それでも★4は点けますが・・・

PS,テポドン撃ったのは『キューポラのある街』の三ちゃんでない事を祈ります。

(評価:★4)

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