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[コメント] ミリオンダラー・ベイビー(2004/米)

ヒラリー・スワンクが文字通り体当たりの演技を見せる。これがイーストウッドのトレーナーとともに、おのれの才覚とガッツで成り上がってゆく物語…であった筈が、「シンプルなラブストーリー」へと道を曲がり始め、挙句の果ては…。これは気持ちよく観られない作品に成り果ててしまった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







スワンクのボクサー姿は見るからに生き生きとしていて、30の大台に乗ったがけっぷちボクサーとはとても思えないその勇姿には思わず膝を乗り出して見入ってしまったのだが……。

世界タイトル戦において、固い絆をそこまでに育んできたふたりは思いもよらぬ試練に晒されることになる。思わぬチャンピオンの一撃で、スワンクは『海を飛ぶ夢』状態に陥ってしまうのだ。それまでにも彼女に寄生虫状態でくっついてくる、イヤミな彼女の一家が描かれてはきているのだが、彼らはここに至り非人情な正体を大っぴらにする。そして状況はイーストウッド&スワンクVS.非情な世の中という世にも不幸な物語の様相を呈する。

海を飛ぶ夢』を自分が肯定したのは、主人公が確固たる意志をもって死に立ち向かっていった実話の映画化だからだ。それに反し、ここに描かれる殺人は悲恋を解決に導くきわめて古風でロマンティックな方法にすぎない。これを観て、なんだ、いつものイーストウッドの熟年ロマンス路線のひとつに過ぎないのか、と一気に興が醒めてしまった。アカデミー賞を素直に崇拝するほどイノセントではないつもりだけれど、これはいただけない。俳優陣はいずれも好演ではあるのがせめてもの救いだった。プラス1点は彼らへのねぎらいである。

(評価:★3)

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