コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 交渉人 真下正義(2005/日)

いろんな“パクリ”を寄せ集めた“オリジナル”。『踊る』シリーズと関係なく面白い。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







以前から私は「本広克行監督は『パトレイバー』ファンである」と指摘し、『踊る〜2』では「もうやりたいだけパトレイバーやっただろ」とまで言ったものだが、本作はもっともっと『パトレイバー』である。ていうか、まるで『パトレイバー』。そこまでやるか!だったら、伊藤和典に脚本書いてもらえばいいのに、ってくらいのもんである。 これはいただけない。

だが、ヒッチコックの『知りすぎていた男』をやり始めた時に許そうと思った。思わず笑った。 いや、『ジャガーノート』はやると思ったけどね。古畑任三郎でもやってるし。ていうか、キャスティングが妙に古畑任三郎だよね。まあ、いいけど。 でね、やたら「ボレロ、ボレロ」言い出すでしょ。まさかクロード・ルルーシュやるはずもなく、すわ「デ・パルマか?デ・パルマか?『ファムファタール』かぁ?」とか言ってたら、本家ヒッチ先生とは。これが、「50年も前のネタだからバレないだろう」という意図でパクったなら許せないが(実際若い人は知らないだろうが)、こんな世界的に有名なネタをパクってバレないと思うはずもなく、オマージュですよこれは。もしくはパロディー。

要するに、この映画を観るのに必要なのは「踊る」シリーズではなく、『パトレイバー』なのだ。 本作中、無理が生じたり不必要に思える部分も『パトレイバー』を知っていれば納得できる。理解できるわけではない。納得できるだけだ。「ああ、監督がやりたかっただけなのね」と。

こうして考えると、『サマータイムマシン・ブルース』で唐突にガンダムのBGMを使用したりしたことも含め、本広克行は結構オタクな人だと推測できる。まあ、オタクという言い方が適切かどうかはともかく。

この映画が、どの本広作品より、ことに「踊る」シリーズの中でも傑出していると思うのは、オタク監督・本広克行が、オタク主人公(警察も犯人も)で描いた点にある。 真下にも犯人にも監督自身の姿が投影されていて、おそらく監督自身の気持ちがストレートに描けた作品ではないだろうか。

表面上のネタは、前述したように『パトレイバー』をベースに、様々なアニメや映画等の寄せ集めだが(その寄せ集め方はそれはそれで秀逸だが)、その芯にあるものは本広監督の本質=作家性とも言える。これは他の本広作品ではあまり感じられない。 そして、この作品で垣間見える本広監督の作家性は、実に見事なオタクっぷりなのである。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)煽尼采[*] freetree[*] Myurakz[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。