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[コメント] サハラ 死の砂漠を脱出せよ(2005/米=スペイン)

80年代的なノリの作品。冒険活劇モノとしてはなかなかの水準だと思う。
evergreen

 アフリカの描写が素晴らしく、現地を旅しているように感じられた。アフリカはジャングルと砂漠の中に槍を持った未開の民が野生動物を追いながら暮らしている、などというイメージを持つ人は最近ではそういないと思うが、それに近い印象があるのも事実だ。アフリカといっても地中海文明とアラブの薫陶を受けた北部のチュニジアやモロッコ、ナイル川に文明が栄えたエジプトなどのアラブ・アフリカ諸国と、サハラ以南のナイジェリアやガーナ、エチオピア等の独自の文化を持つブラック・アフリカでは全く世界が違う。日本とインド、同じアジアでも文化・社会まるで違う事を考えれば当然と言えば当然なのだが、我々は個々のアフリカ諸国に対する情報・知識があまりに乏しい為、「アフリカ」と一体化して見てしまう傾向があるようだ。もちろん、アフリカには豊かな自然が残されてるが、多数の人が住んでいる地域でもある。南アフリカのヨハネスブルグやセネガルのダカール等はビルが林立する大都会だ。最もヨハネスブルグやケニアのナイロビ、今作の舞台になるナイジェリア・ラゴスなどは治安が相当悪く、ヨハネスブルグのダウンタウン等は「リアル北斗の拳」の世界で、外国人が一歩足を踏み入れると即「お前はもう、死んでいる」状態になるらしい・・・(興味のある方はgoogleで検索してみて下さい)

 今作では軽快なアフリカン・ミュージックに乗せてナイジェリアのラゴスの下町や港街の描写などでの生活の様子が生き生きと描かれ、引き込まれた。都会的な雰囲気をも漂わせるアフリカン・ミュージックは素晴らしく、多くの人がサントラを買っていた程だ。私も思わず買ってしまった。

 ストーリー展開としては、現代を舞台にした正統派の冒険活劇で、インディージョーンズやハムナプトラ等に出てくるような怪奇小説的な要素は無く、前半を除けば展開も速いので120分という時間の割りにダレる事無く楽しめると思う。チャランポランな主人公を支える脇役が個性的で、特にスティーヴ・ザーン は主役を完全に喰っていたと思う。あえて言うなら敵役の企業代表やマリ大統領の役柄が上手く描かれておらず、敵としての存在感が希薄な点や、主人公が装甲船を捜し求めようとする動機が希薄で、やや作品のピントがズレていた感想は受けた。装甲船がなぜ、アメリカから彼の地へ向かった動機もはっきりしない。また展開があまりにも主人公達の運というか、偶然による発見で上手く進んでいく点もご都合主義だが、こういう作品ではお約束か。原作のダークのイメージからマシュー・マコノヒーらが主役に選ばれたのだろうが、日本の観客へ冒険活劇大作としてアピールするにはやや地味目なキャスティングだろう。

 私は原作となった「ダーク・ピット」シリーズを全く読んだ事が無いので、 原作と比較してどうだ、という事は判らないが一本の冒険活劇映画として見たらスケールの大きさ(にもかかわらず、B級な雰囲気があるのも事実だが)、アフリカの街やサハラ砂漠を旅するエキゾチックさ、素晴らしい音楽、ボートアクションシーンの素晴らしさ等、娯楽作品として標準以上の出来であると思う。

 冒険モノとしては謎解きに力点が置かれ、アメリカ国内で物語がこぢんまりと展開する『ナショナル・トレジャー』よりも、こういう80年代的なノリの作品が個人的には好みだ。夏休み・お正月映画として、冒険を夢見る青少年の為にもこういう作品は今後も 作り続けてもらいたいものである。

(評価:★4)

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