[コメント] 宇宙戦争(2005/米)
あるいは『激突!』、またあるいは『ジョーズ』にしろ、彼が単純明快なパニック映画の作家であった時代は確かに存在したのであり、また『カラーパープル』や『シンドラーのリスト』などを経ることで、もはや自作からウェットなテーマを外せなくなっていることも自明であろう。スピルバーグは、そういう自分の作家性を否定することなく、もう一度原点に立ち返ってみようとした風が見受けられる。
だから、これはきわめてスピルバーグらしい『宇宙戦争』であり、良くも悪くも彼の作品という範疇に置かずして語りえない作品になっている。
自分はそれほどのスピルバーグ・ファンではなく、その作家性を無批判に受け入れる大らかさも持ち合わせてはいないが、家庭というミニマムなユニットを軸として、世界的な侵略劇を展開した手腕は認めざるを得ない。しかし、もはや風化しているH・G・ウェルズのSFエッセンスすらもお座なりに語り、スピルバーグ・ブランドを押し売りする態度においては、これは自分の愛するSF映画のワク内には入れたくはない作品でもある。「好き」という意味では、これもSFと呼べるかどうかは別として、自分は本作よりも『マーズ・アタック!』を断然支持する側に廻ることを、ここに宣言しておきたい。
あるいは、大阪に展開されるトライポッド対マーカライト・ファープの人類の存亡を賭けた大乱戦をフィルムに収めてくれたなら、もう少し点数を上げても良かったのだが(もっとも監督は大映映画へのオマージュだと語っているようだが)。
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