当たり前のことだが、映画は虚構であり現実ではない。だが、時として現実に影響を及ぼすことがある。

『アカルイミライ』は一つの転機だった。あの作品中で浅野忠信は、オダギリジョーに「行け」のサインを出した。オダギリはそれを忠実に実行し、かつて浅野が備えていた色気を受け継いだ。その揺るぎない成果が本作に結実した。

その色気とは、『水の中のナイフ』の若者にも備わっていた、すべてを奪おうとするエネルギーや勢いが素になっている。

だが、死にゆく主に代わって、あの共同体を維持するためには、「築く」ことが求められる。時として、「築く」ことは、「奪う」ことの終焉を告げる。若く荒ぶる日々の「終わりの始まり」。作品中のオダギリはそうした転機を迎えていた。あの色気はその転機を迎えたときの戸惑いも内包していたのではないか。

オダギリの中で何かが終わり、何かが始まった。そう感じさせる脚本と彼の存在感が抜群に良かった。